海外生産背景を強みとしたアパレルメーカー事業
株式会社アスティ
素材提案力と企画力で価格以上の価値を提供
多くの海外生産背景を強みに、ODMやOEMを主力とするアパレルメーカー事業が好調に推移している。時代の変化をにらんだ挑戦が実を結び、祖業の繊維卸から飛躍を遂げた。グローバル化が進みコスト競争が激化していく中、いち早くバングラデシュに進出。
生地開発のノウハウや素材調達のネットワークをもとに優位性の確立を目指す。
海外生産機能の強化
繊維・アパレル産業を国の基幹産業とするバングラデシュで生産を始めたのは2013年。16年に首都ダッカに事務所を開設し、生産拡大を推し進めてきた。22年には同国最大の港湾都市チッタゴンエリアで生産を開始。コスト対応力に加え、生産管理機能の強化にも力を注ぎ、服種の拡大、高付加価値商品の生産により競争力を高めている。
協力工場は現在計6カ所。生産枚数はここ数年、年間250万枚前後で推移している。大手量販店やアパレル専門店向けカットソー(ニット素材の裁断・縫製)や布帛(織物生地)などの製品を手掛け、品質や納期も安定し、得意先からの評価も高い。
素材提案力の強化
素材(生地)バリエーションを増やすことで取扱い製品の幅を拡大。競合先との差別化を図り、大手衣料専門店向けOEMや全国流通大手向けPB製品などの主力取引先の受注実績をもとに新規開拓につなげている。
マーケット動向を見極めた企画提案力を武器にODM・OEMが業績を引き上げた。また、東京本社でアパレルテキスタイルに特化した展示会を開催し、縫製だけでなく、生地の開発による吸汗や冷感など機能性の高い生地のラインアップも行い素材提案力をコンセプトとして明確に打ち出した。
バングラデシュをはじめ、中国やベトナムなど海外生産背景ごとの特色に応じて生産地を使い分け、顧客に価格以上の価値を提案する。
挑戦し続ける
戦後間もない混乱期、尾山悦造ら10人で立ち上げた繊維問屋(十和織物)は高度経済成長の波に乗り、西日本一の地方問屋に成長。しかし卸売業界の将来を見据え事業を川下(小売のフジ)に広げ、さらに川上(製造)に軸足を移しアパレルメーカー機能を獲得した。この決断が現在のアスティの礎となった。創業来の行動指針「失敗を恐れず挑戦し続ける」が業歴を紡ぐ原動力だ。
競争の激しいアパレル業界でポジションを獲得するため消費者起点のモノづくりを重視し、企画提案力の強化として24年からマーケティング力の向上に注力している。
素材提案と企画提案によってさらなるマーケットの拡大に向け挑戦を続ける。
可能性を引き出す
24年から潜在的な能力や意欲のある人材を異業種からでも積極的に採用する〝ポテンシャル採用〟を開始した。新井社長は、「本人の意欲さえあれば、中長期にわたって育てていきたい。海外で活躍できるグローバル人材も一定数必要。チャレンジ精神にあふれた人を求めている。若手登用も積極化し、25年度は20代係長が5人(女性2人)誕生。可能性を引き出す環境を醸成していく」
商社にとって成長の要を〝人〟と捉え、今後の事業拡大に向け人材への投資を積極的に行っていく。
会社概要
株式会社アスティ
本 社:広島市西区商工センター2-15-1
設 立:2006年9月
資 本 金:1億円
売 上 高:89億円、グループ112億円(2025年2月期)
従業員数:101人
事業内容:アパレルおよびバッグの企画・製造・販売
T E L:082-278-1111
U R L:https://www.asty.co.jp
※2025年9月当時の情報です。