国際貿易DXを推進海外でデータセンター展開水力発電や原子力分野も注力
株式会社ムロオシステムズ
呉市発、東京進出を経て世界へ
2006年に呉市で創業、13年には東京へ本社を移転し、現在は海外にもフィールドを広げる。国際貿易DXなどが成長し、25年3月期売上高は2年連続で20億円を突破した。
国際貿易プラットフォームの自社運営は、20年度に中国―豪州間で始めた。ブロックチェーン型のデータベースを用い、両国間の製品のサプライチェーン管理や輸出入事務の代行、代金支払いまでを一元管理する。通常のシステム会社と違い、アマゾンなど米国IT大手のようにサービス基盤の構築と運用を自社で担う「プラットフォーマー」として実績を積んできた。これらが評価され、23年にはプラットフォームの利用拡大による国内企業の貿易振興や手続き効率化、コスト削減などを目的とする経済産業省主催の「貿易投資促進事業費補助金」に採択された。潘忠信社長は「既存のムロオシステムズ国際貿易プラットフォームを改修し、貿易における業務効率化やデジタル化をさらに最適化する予定です。そして、日本の国際貿易拡大に貢献します」と熱意を語る。
国内の顧客を対象としたDX導入支援では物流の効率化システム、携帯端末を使ったPOSレジ、教育施設向けアクティブラーニングや総合学事システムを手掛ける。流通業のQR決済サービス「MSPS」は導入先が5万店あり、高い評価を得ている。さまざまな業界向けにカスタマイズしたソリューションの提供が強みだ。24年1月にはシステムエンジニアリングとITコンサルを提供する新会社を設立した。
世界に羽ばたく人材求む
海外ではキルギスで19年に始めた金融大手SBIグループ向けブロックチェーンデータセンター事業などを軌道に乗せている。同事業は顧客のデータを分散的に共有・記録(ブロックチェーン)することで改ざんを防ぎ、透明性を実現する。24年にエチオピアでもデータセンターを完成した。さらに将来、自社の再生可能エネルギー発電で分散型計算力センターに電力供給する構想を描く。
キルギスでは水力発電所の建設を計画する。24年に日本とキルギスの二国間協力に基づくエネルギートランジションプロジェクトの第1号案件に採択され、25年度は経済産業省の「二国間クレジット制度資金支援事業」に選ばれた。さらにトルクメニスタンのエネルギー省とは「エネルギー分野における戦略的協力に関する覚書」を締結。原子力分野にも力を入れる方針で、ドイツのNUKEMテクノロジーズエンジニアリングサービスをグループに加えた。次世代エネルギー分野の革新を目指す。
また、中央アジアへの国際協力を念頭に、山の斜面を網目状の鉄製線材で覆うことで落石などを防ぎ、異変を検知・通知する「防災用ワイヤーメッシュ」事業も計画。現地のインフラ整備に貢献していく。このほか中国ではビッグデータ処理・解析事業などを手掛ける。
ムロオシステムズは物流地場大手のムロオ(呉市)の100%出資で06年に設立し、12年に鷗州塾運営のAICエデュケーションが第三者割当増資を引き受けた。19年のSBIグループとの取引開始に当たって事業と資本の再編成を図り、現在は潘社長が全株を取得。海外企業は連結対象外。潘社長は「広島から東京へ、そして世界へと羽ばたく人材を求めています。将来の持続可能な社会の実現に向け、環境と経済の好循環を志向する企業を目指したい」と話す。
会社概要
株式会社ムロオシステムズ
本 社:東京都中央区日本橋本町4-15-1(呉市発祥)
広島支店:呉市中央1-6-9
設 立:2006年6月
資 本 金:5000万円
売 上 高:21億8795万円(2025年3月期単体)
非連結の海外関連会社を含めると約57億円
役 員:取締役会長・山下俊夫(ムロオ代表取締役会長)、取締役相談役・白神晶幸、取締役・丸野雅弘(AICエデュケーション常務取締役)、監査役・山下俊一郎(ムロオ代表取締役社長)
従業員数:27人(単体)
事業内容:クラウドサービス、DX、システム開発、国際貿易DX/原子力エンジニアリングサービス、水力発電など
T E L:03-6892-0550
U R L:https://www.muroosystems.com/
※2025年9月当時の情報です。