伝統技法の集大成広島仏壇を守り次代につなぐ
株式会社三村松
ニーズつかむ多彩なデザインそろえる
2025年1月、創業160周年を記念した仏壇シリーズ〝平和モダン〟を市場に送り出した。時代の変化とともに様変わりする仏壇需要に応える。少子高齢化や核家族化が進み、仏壇業界も大きな変革に迫られている。経営環境は厳しさを増すが、国内最大級の仏壇メーカーに成長を遂げた現在、金仏壇製造出荷本数46年間連続日本一(宗教工芸新聞調べ)の実績をブランドに伝統の技と文化を次代につなぐ。
モダン仏壇
平和モダンは、シンプルでコンパクトなデザインでありながら品格をまとう。広島から〝平和〟を発信する願いも込めた。家具メーカーの廉価な仏壇が市場に出回る中、伝統工芸士の手漉き和紙を使ったり、漆塗りなど仏壇づくりの技を随所に生かした。和洋の室内を問わず、和の心を日常の空間に息づかせる。
生活様式が変わり、床の間の無いマンション世帯の増加とともに地域や寺との縁も薄れがちで、仏壇と向き合う姿勢も世代とともに受け継がれにくくなっているという。六代目の三村社長は、「仏壇とはそもそも家の中の〝寺院〟であって宗派によって阿弥陀如来や釈迦如来などご本尊は異なるが拝む対象は仏様であることに違いはない。時代が変わっても、心のよりどころとして必要とされる仏壇を提供していく。そのためにも市場ニーズの把握は欠かせない」
製造小売りと卸の両輪で、伝統に則った技が冴える金仏壇や唐木仏壇から、多彩なデザインのモダン仏壇まで幅広い品ぞろえを拡充する。
新デザインで最高賞
25年の第26回全国伝統的工芸品仏壇仏具展に広島仏壇3本を出展し、「20号前開向堂造」が新デザイン部門で最高賞の経済産業省大臣官房商務・サービス審議官賞を受賞。棚や段の蒔絵意匠が仏壇に気品を与え、拝む人を軽やかな心地にさせる。伝統意匠部門は「一尺九寸総木瓜向堂造」が入賞、「18号前開紅溜塗向堂造」は伝統的工芸品産業振興協会賞を受賞。
金仏壇は木地、狭間、宮殿、須弥壇、錺金具、漆塗・金箔押し、蒔絵の七匠の職人技で成り立つ。主な需要層の浄土真宗の安芸門徒をはじめ、全国各地の宗派や地域の要望に応えてきた。広島や鹿児島など国内外に複数の工場を擁し、広島中心に直営10店舗と全国卸の販売網を敷く。需要は先細るが修復需要や寺院と神社などの修復、増加傾向の納骨堂などにも匠の技を発揮。
広島市内中心部の本店は300本以上の仏壇をそろえ、「和の工芸館」はショールーム機能を備え、モダン仏壇のある生活空間を提案する。
被爆を乗り越え
慶応元年(1865年)、初代「三村屋」嘉助(かすけ)が副業で始めた仏壇・仏具の商いが原点。続く元次郎(もとじろう)が製造卸の礎を築き、現社名の由来となる松次郎(まつじろう)が金仏壇の一大生産地として広島仏壇業界のリーダー的地位を担い事業を拡大した。四代目の繁己(しげみ)は原爆で店も自宅も全てを失ったが多くの職人たちの願いを背負い、再起を図る。
品質の安定した量産体制は邦雄社主が確立。価値観の多様化が進む中、伝統を継ぐ使命を負う三村社長は、「伝統的仏壇は技法の集大成。特に金仏壇は総合芸術と言っていい。経済情勢は厳しいが、手を合わせる日本の精神文化と価値ある本物を継承していく」と決意を新たにする。
会社概要
株式会社三村松
本 社:広島市中区堀川町2-16
設 立:1958年5月(創業1865年)
資 本 金:48億4000万円(自己資本比率95.2%)
売 上 高:38億7764万円(2025年4月期)
従業員数:323人
事業内容:仏壇、仏具の製造と卸小売り
T E L:082-243-5321
U R L:https://www.mimuramatsu.co.jp/
※2025年9月当時の情報です。